ワーク・ファミリー・エンリッチメント理論(work-family enrichment theory)
日本語で訳すなら、「仕事とファミリーの相互充実」 Work Life Erichmentの理論は、J.H. & Powell, G.が、When Work and Family are allies: A Theory of Work and Family Enrichmentの中で紹介している概念。 仕事と家庭における片方の役割がもう片方の役割を改善するメカニズムを理論化している。 これは言い換えれば、仕事と家庭生活のシナジーを生み出すメカニズムについて理解する試みと言える。 仕事と家庭とが影響し合う効果は、大きく3つある。 1つ目は、仕事での充実や満足と、家庭における充実や満足を足し合わさって人生全般における充実と満足になるという「加法効果」。 2つ目は、仕事でうまくいかないときに、家庭での充実や満足がそれを補ってくれる、あるいは反対に家庭でうまくいかないときに、仕事での充実や満足がそれを補ってくれるという「緩衝効果」。 3つ目である仕事経験が家庭における質を高める、もしくは家庭経験が仕事での質を高めるという「ワーク・ファミリー・エンリッチメント」。 彼らのモデルは以下のとおり。 まず、仕事もしくは家庭での役割経験(役割Aとする)によって、資源(リソース)が獲得される。 それには、技能的なもの、心理的・身体的なもの、人間関係・人脈的なもの、柔軟性、物理的資源、などがある。 こういったリソースは、まず、役割Aにおけるパフォーマンスを向上させる。 また、これらのリソースの存在、そしてパフォーマンスの向上は、役割Aにおけるポジティブな感情につながる。 そして、役割Aにおけるポジティブな感情は、役割Aとは片方の家庭もしくは仕事での役割(役割B)におけるパフォーマンスの向上につながることになる。 さらに、役割Aで獲得したリソースは、役割Bが本人にとって重要であるほど、もしくは役割Bとの関連性が高いほど、役割Bのパフォーマンスの向上に貢献する。 例えば、私生活で形成した人脈が仕事に生かされたり、仕事で部下を管理する経験が子育てに生かされたりする。 そして、役割Bのパフォーマンス向上は、役割Bにおけるポジティブな感情につながると考えられる。 この概念は、ワークライフバランスを考える上でとても参考になる考え方。 簡単に言ってしまうと、一つの役割で高いパフォーマンスを発揮すると、その役割にプラスのモチベーションが働く。 そして、その高いモチベーションを活用することにより、別の役割でも高いパフォーマンスを発揮できるようになるということ。そしてこのサイクルは繰り返されるという、ポジティブフィードバックループ(善の循環)サイクルの考え方。 仕事上の高いパフォーマンス、たとえばプロジェクトマネジメントの技術が、子供の教育を助けるかもしれない。 また、家庭のマネジメントを上手にできているということが、会社では、部下のマネジメントに生かされていく、という感じ。 このような相互のシナジーが働いていくというのは、理想的なもの。 ワークライフ・バランスよりもワーク・ライフ・エンリッチメント。 家庭生活の中に確固たる役割を得ることができれば、家庭生活での人間関係や人脈ができる。 仕事とは異なる柔軟性や考え方が身につくようにもなる。 これらは仕事のパフォーマンスの向上につながる。 例えば、子育てをしながら働いている女性の多くは、「肉体的にも、精神的にもしんどいこともあるけれど、子育てをしている経験が仕事に役立つ」と答える傾向が強い。 またトップ自ら育児休暇を取って話題となった東京都文京区の成澤廣修区長も、「母親は偉大。男性もどんどん取って、育児に参加すべし」との感想を漏らし、「仕事の幅も広がる」と公言している。 「ファミリー・トゥー・ワーク・エンリッチメント」の効果を存分に得るには、「家庭」と「仕事」の両方を大切にする気持ちが不可欠である。 つまり、仕事が自分にとって大切なものであればあるほど、いい仕事をしたいと思っている人ほど、家庭生活での役割が、プラスの影響をもたらす。
by shokunin_nin
| 2012-10-06 10:48
| 家族
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