社員同士のヨコの関係が強い会社は、総じて「強い会社」である、ということ。
そこにあるのは、協働の実践。 企業や組織のヨコの連携を効果的に進めるには、人と人との連携、すなわち「協働」がカギを握る。 それには、経営の中心をカネから人へと変えていかねばならない。 リーマンショック以後の世界不況の原因は何か。 どの会社でも「経営がカネに偏りすぎた結果だ」「今こそ改めて人を大切にする経営に注目すべきだ」との議論が起きている。 実際に企業の一部では、経営戦略や組織戦略よりも、人材育成や企業哲学を重視する傾向が見られる。 そのほかにも、いくつか強い会社の共通点がある。 まず、経営者が会社として進むべき方向やビジョンを社員に明確に示しており、また社員も共通の夢や目標をしっかりと持っていること。 誰もが同じ思いで仕事に取り組むので、おのずと組織全体に一体感が生まれる。 組織の風通しの良さ(すなわちコミュニケーションの密度)も重要。 風通しが悪いままでは、優秀な人材や個性的なアイデアが、組織の中に埋没してしまう。 強い会社の条件を満たす組織には、上下関係をあまり気にせずに本音で語り合えるような空気が漂っている。 オレは部長だ、課長だ、といった気負いがなく、良いことも悪いことも率直に話せる。 すると、タテの関係からは見えてこなかった物事の本質が見えてくる。 ここが大事。 これはよく言われることだが、人と人との交流や一体感がもたらす効能の具体例は、多くの企業に置かれている「喫煙室」に見ることができる。 なぜオフィスではなかなか生まれない「風通しの良さ」が、喫煙室ではたやすく実現できるのか。 喫煙の良し悪しは別の問題として、そこに集まる社員たちは職制や職位に関係なく、「同じ喫煙者である」という仲間意識がある。 「肩身が狭いね」という、悩みを同じくする者同士、という要素もそれを強めているかもしれない。 この「同じ仲間」という気持ちが、タテの関係を超えたヨコへのつながりを生みだし、互いに打ち解けてしまう。 「君、いま何やってるの」「そうか、面白そうだね」「僕はこんなことをやっているんだが、うまくいかず困っているんだ」「じゃ、こうしてみたらどう?」「そりゃいいアイデアだ」…といった調子。 タバコを吸いながら話が弾み、いろいろな愚痴や悩み、ときには奇抜なアイデアが飛び出す。 結果として、人と人とのヨコのつながりは確実に深まる。 ここでは喫煙室を例に挙げたが、同じようにコーヒーブレイクで社員が一息入れて、気軽に話し合える場所があるといい。 大事なのは、肩の力を抜いて気負わずに話せる、本音が出てくる「場」をつくること。 風通しの良さと一体感を組織の中につくり出す、さらにはこれを自社内だけでなく他社との間にも広げていくことが、会社を強くしていくには大切。 企業はタテだけを強化しても決して強くはならない。 ヨコが大事。 きれいな織物は、決して縦糸だけでは生まれない。 縦糸と横糸とが織りなす絶妙な調和があってこそ、素晴らしい模様があらわれてくる。 そもそも働くことの意味は、仕事を通して「他者と結び合う」ことにある。 企業の力とは個人の力ではなく、個の力が統合された集団の力です。個の力を集団の力に変えていくには、さまざまな個性と異なる能力を持った人と人とを上手に結びつける、映画や演劇のプロデューサーのようなマネジメントが求められる。 つまり、個々の多様な能力をつないで、ヨコの「協働」を促すようなマネジメント。 これがないと、せっかくの個の力が眠ったままになってしまう。 ヨコを強くすると、タテも同時に強くなる。 例えば、旧く栄えた街でよく見るアーチ型の石橋のようなイメージ。 石橋を構築するときには、アーチ部分の逆台形の輪石をどう並べ、横の壁石をどう繋ぐかが重要になる。 隣同士のヨコの石をしっかりと見ながら並べていくと、結果としてタテ(垂直方向)に強い石橋ができる。 会社で言えば、仲間同士のヨコの関係が強ければ、上司・部下のタテの関係もおのずと強くなり、しっかりとした組織になる、ということ。 ところが現実を見ると、タテ割りでヨコのつながりに欠け、人と人との結びつきが弱い企業の方が多いように感じる。 というのも、ここ10年の日本企業は米国型の経営に押し流され、資本効率(カネ)に重きを置く傾向が強かったから。 おのずと経営は数値(売り上げ、利益、株価など)の達成が目標になり、この達成に向けたプロセスの多くではコスト低減や時間の短縮、人員削減など、デジタルな作業効率の向上ばかりが求められることになる。 こうして経営における人の大切さが軽んじられ、カネばかりを見ていて行き着いた先が、リーマンショックを機に一気に吹き出した金融恐慌だと言っていい。 カネというのは本来、非常に気短な存在。 カネに執着する限り経営は近視眼的になり、短期的な利益ばかりを追い求めることになる。 こうしたカネ偏重の経営の“副作用”を避けるには、カネやデジタルな数値ばかりでなく、もう少しアナログで人の温もりのある経営指標に目を向けるべき。 例えば、モノやサービスを創り出す喜び、仲間とともに切磋琢磨して働く喜び、仕事を通して味わう生き甲斐などがそう。 人や心といったアナログな指標は、カネとは違って気長なもの。 また、おそらく企業・組織ごとに、指標の物差しは違うものになる。 誰かが教えてくれるのではなく、自分たちで考え、探し出さねばならない。 ただ、共通の要素があるとしたら、ヒントはいま改めて言われ出した、カネから人への経営という変化の波に見える。 この動きは、経営のリズムを短期から長期に変えていこうという、世の中の流れを示している。
by shokunin_nin
| 2009-06-11 00:38
| 仕事
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