電子メールゲーム

「電子メールゲーム」

オフィスで必須のツールとなった電子メールでのやり取り。
便利で効率的なだけに、メールだけですべてのコミュニケーションを完結させている人もいるかもしれない。
重要な情報に関して電子メールに過剰に依存することに大きなリスクが潜んでいる。
「電子メールゲーム」
ゲーム理論では通常、参加者が「自分たちがどのようなゲームをしているのか」を徹底して知り尽くしていることを前提にしている。
だが、現実には、取得情報には個人差があり、参加者の間でゲームのの仕組みについて合意が形成されていない場合もあり得る。
このような合意形成のために電子メールのような一方通行の伝達手段をとりいれても、共有知識が得られず、結果として望ましい協調行動がとられなくなるリスクがある。


古代・戦国の世に覇権争いを繰り広げる3国を想定してみる。
3国の中でも、一番巨大で軍事力が強固な大国がA国である。
A国は堅牢な守りを固めているが、まれに隙を見せる時がある。
そこで、隣接する小国B国とC国が結託し、隙を見計らって一緒に攻め入る計画を立てる。
軍事力の面では、B国だけでもC国だけでも、単独でのA国攻略は難しい。
しかも守りが堅いときには、たとえ両国が協力して攻めてもA国にはかなわない。
いつA国の守りが甘くなるかについては、地理的な理由でB国からしか確認できない。
C国はB国からの情報でA国の守備の状況を知る。
B国とC国は友好関係にあり、普段から使者を継続的に行き交わせており、受け取った情報について「受信確認」の使者も自動的に送るのが暗黙の了解になっている。
ここで、使者が逃亡したり、三族に襲われて殺させるなどの理由で、わずかな確率で相手国に情報が届かないリスクがあるとする。
1回ごとのやり取りで使者がいなくなる可能性は非常に低いが、延々とこの確認作業を続けていると、どこかでコミュニケーションがストップする。

いざ攻撃のチャンスが来て、B国からC国に使者が放たれた。
もしも運悪く最初の使者がC国に届かなかった場合は、C国にはA国の隙が伝わらないので、両国は協力できないことになる。
それでは、C国に使者がたどり着いたものの、C国からB国への受信確認の使者が届かなかった場合はどうなるか。
B国は既にA国の隙を知っている。
一見すると、C国に無事使者がたどり着いてC国にもこの状況が伝われば、両国は協力できるように思える。
しかし、B国には、そもそも自分の使者が届かなかったのか、それともC国からの使者がいなくなったのか分からない。
2つのシナリオの起こる確率はほぼ50%ずつ。
もし、前者であれば、情報の伝わらなかったC国は傍観したままなので、B国だけが攻めることになり自滅する。
すると、自滅するリスクが十分に高いので、B国はA国に攻め込むことができない。

こういう状況でどれだけ使者のやり取りを重ねても、両者が協調できない。
「A国の守りの甘さ」という情報が、2国間で共有知識にならないのが原因。

各人が個別に何かを知っていることと、みんなが一緒に何かを知ることには大きなギャップがある。
こうした状況は現代社会にも十分に当てはまる。
使者が電子メールに変わる。
電子メールも相手に情報が伝わる確率は決して100%ではない。
何%化の確率で相手の迷惑メールフォルダに仕分けされたり、送信したつもりができていなかったり、サーバーが不調になって失われたりする可能性がある。
重要な電子メールほど人は慎重になるので、「受け取ったら返信をお願いします」とメッセージの最後に一文を入れるのはよくあること。
だが、どれだけ慎重にやり取りを繰り返してもいざ返信が来なくなった時、上述の2国のような身動きが取れなくなるリスクが生じる。

便利に思えても、電子メールはあくまで一方通行の伝達手段。
情報を伝える必要のある人たちに同時に情報を伝える手段としては、理論上も会議や電話に勝る手段はない。
実際、大事な要件について「今メールしましたのでご確認ください」とわざわざ電話する人もいるだろう。
当事者間の認識にギャップが発生するコミュニケーションの仕方には、思わぬリスクが潜んでいる。
情報を共有する場面で一番リスクが低いのは、面倒に見えても、結局は顔と顔を合わせ、同時に情報を得ること。
世界が加速度的に便利になっても、しばらくこの原則に変わりはなさそう。
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by shokunin_nin | 2010-09-10 00:02 | 仕事 | Comments(0)
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