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プレッシャーの代償

急がせる組織には、常にプレッシャーがかかっている。
管理者は、意識的に出あれ無意識にであれ、このプレッシャーに貢献していることは間違いない。
自分自身に膨大なプレッシャーがかかっているのだから、それを下の階層の人々に伝えて何がいけないというのだ。
また、プレッシャーを受け入れ、その中でかんばっていることを見せることによって、他の管理者にもさらにプレッシャーをかけている。
他の管理者も、課題に対して積極的ではないと思われるわけにはいかない。
部下にプレッシャーをかける方法は何通りもあり、その中にははっきりそれとわかる方法もあれば、目に見えない方法もある。
例えば、次のような方法がある。

・納期について圧力をかける(強気のスケジュール)
・仕事量を増やす
・時間外労働を奨励する
・失望した時の怒る
・一人の部下の並外れた努力に注目し、それを他の部下の前で褒める
・優秀な業績を上げなければ厳しい態度を取る
・全ての部下に大きな期待をかける
・時間の無駄と思われることをののしる
・自分が見本になる(上司がこれだけ頑張っているのだから、他の人もいい加減な仕事はやっていられないに違いない)
・望ましい行動や結果を奨励するためのインセンティブを作る

知識労働者に対する報奨制度には、管理の仕方が分からない管理者の哀れを感じる。
まず何よりも、インセンティブは大抵取るに足らないもの。
「納期に間に合ったチームは全員、旅行などの商品と交換できる5000アドバンテージ・マイルを獲得できます」
ああ、そうですか。
もし、賞品が数億円の現金で、プロジェクトを予定より早く完成した6人でそれを分けられるなら話は別だろう。
しかし、アドバンテージ・マイルだとか、記念プレートだとか、表彰状だとか、今月の優秀社員、今月の優秀チームといった中身のない賞がなんになるだろう。
もう少し真面目に考えろと言いたい。
こんなインセンティブでは、対象とする従業員の行動を何一つ変えることはできない。
しかし、「管理者は全員に急いでほしいと考えている」という明確なメッセージを伝えることによって、プレッシャーを増すことになる。
ちょっと待った。
プレッシャーが増して、行動が変わらないなどということがあるのか。
そんなことがありうるのか。
ところがありうる。
プレッシャーを高めるために何をしても、人の行動が有意義な方向に変わることはない。

プレッシャーは管理者の声ではなく、企業文化が管理者を通じて語っている。
組織の間では、プレッシャーを増せばパオー万巣が向上し、最大限のプレッシャーをかけなければ最大限のパフォーマンスは得られないという考えが常識になりつつある。
この発想は、深く文化に組み込まれているが、現実に検証するとその通りにはならない。
by shokunin_nin | 2010-12-26 23:45 | 仕事
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