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恐怖と安全

組織の変化が成功するためにどうしても欠かせないものを一つ上げるとしたら、安全である。
人は少なくともある程度はどんな仕事をしているかによって自分を確立しているため、仕事の内容を変えることは、個人のアイデンティティに深く関わる問題である。
これは恐ろしいことである。
このような変化に対しては、激しい抵抗が起きることがある。
そのような抵抗は、陰に隠れ、怒りや中小を生み、破壊的な影響をもたらすこともある。
これらに対しては、強制的な管理では対処できない。
先を見越した変化は、起こそうとして起こせるものではない。
せいぜい、変化が起きるよう支援することができるだけ。
唯一効果のある手段は、強制ではなく促進である。
変化するためには、必ず何かを捨てなければならない。
捨てるのは、古いやり方である。
それを捨てるのは、古いからであり、時間の経過とともにもはや最適の方法ではなくなったからである。
しかしそれは、やはり古いがゆえに、慣れ親しんだ手段でもある。
それ以上に重要なのは、既に習得した手法であること。
つまり、人々に変化を促すことは、慣れ親しんだ技術を捨て、自己の本質に関わる仕事に対してもう一度初心者になり、ずぶの素人になるよう求めることである。
人はそのような変化に対応できるものだが、それには安全だと感じられる必要がある。
危険な環境では、経験のない立場に追い込まれることを拒否するだろう。
変化に抵抗し、いくら促しても、絶対に変化に参加しないという決意を揺るがすことはできない。

安全ではない場合には、恐怖を感じる。
恐怖は変化を妨げることがある。
しかし、興味深いことに、恐怖が必ず変化を妨げるとは限らない。
途方もなく怖い時には、自ら大きな変化を起こすことがある。
こうした変化には、純粋に事後対応的なものもあれば、そうではないものもある。
恐怖によってある種の学習が強化されることもある。
そうでなければ、アイスクライマーやスカイダイバー、油井の消防士などは技能を修得できるはずがない。
恐怖が学習を妨げる致命的な要素ではないとしたら、なぜ変化のために安全が重要なのか。
恐怖がないという以外に、安全にはどのような意味があるのか。
変化を妨げるのは、陰湿な恐怖、すなわち、嘲笑に対する恐怖。
組織が全く変化できないようにしたければ、新しいなれない仕事のやり方を進めてから、苦労してそれに取り組んでいる人たちをバカにすればよい。
これ以上確実に、重要な変化を妨げる方法はない。
重要な変化のために必要な安全とは、新しい方法を習得しようと苦しんでいる時に、誰も嘲笑されたり、バカにされたり、軽視されたりしないということ。

企業の変化に関しては、棒や石で打たれても生き残れるかもしれないが、「言葉」は息の根を止める。
皮肉やいやみを言い、ぐさりとくる批判をし、目の前であざ笑い、人前で辱め、いらだち、かんしゃくを起こし、あきれてみせる。
これらは全て、重要な変化にとって本当に敵である。
変化を受け入れられる組織にするには、このような不遜な態度を組織から一掃する必要がある。
代わりに、どの階層の人でも、敢えて苦労を受け入れようとすれば尊敬されると、はっきり分かるようにすること。
変化の最中は、どんな失敗でも、教訓を教えるものとして尊重されるべきである。
失敗した人はヒーローであり、変化の立役者である。
失敗によって、その人は前にも増して尊重される。
他の変化を可能にするために、まずはこの重要な変化を組織にもたらすこと。
by shokunin_nin | 2011-03-12 21:32 | 仕事
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