『ありがとう』の反対語

『ありがとう』の反対語は何か。

『ありがとう』は仏教由来の言葉とされている。


「ありがとう」の語源、言えますか?
 仏教では、魂はいろいろな形を持って生まれ変わるという。
6つの道の輪廻と書いて六道輪廻という言葉がある。
人間に限らず色々な形でこの世に生を受ける。
それがたまたま人間であった、ということも確率としてはなかなかないこと、まれなこと。
さらにその中で仏教に出会えることもいっそう困難なことであるとの教え。
有り難いとは、その文字、漢字を思い浮かべていただくと分かるのように有ることが難しいと書く。
今の言葉で言えば『あり得ない』ほどの確率を乗り越えご縁を頂いたということ。
まさに『有り難い』ということ。

『ありがとう』は『有り難し』から来た言葉。
この理屈から言えば、『ありがとう』の反対の言葉として『当たり前、ごく普通、取るに足らない』となるか。


『ありがとう』のルーツ

 『語源辞典』(吉田金彦、東京堂出版)等によれば、上述の通り「ありがとう」は、「有り難い」から来ている。
「ありがとう」は「い音便」の形。
「有り難い」は、動詞「ある」の連用形に「かたし」(難)がついた複合語。

古語ではどうだろうか?
 『古語大辞典』(小学館、第一版)によると万葉集では、すべて漢字を当てて「安里我多之」(アリガタシ)とあるらしい。
「ありがとう」のルーツは古い。
漢籍や仏典では「アルコトカタシ」と読み、存在することが難しい意で用いたが、和文系ではアリガタシが、滅多にない意で多く用いられた。
類義語ではメズラシが、人の外見、筆跡、自然現象に用いられるのに対し、アリガタシは、外見ばかりでなく人の心の様子についても言及する点で異なる、とある。
「感謝する言葉」の萌芽か?


「有り難い」の類義語「希有」は仏典から出た言葉。
室町頃は感謝の意は専ら「カタジケナイ」が用いられ、江戸元禄以降になって、「アリガタイ」が優勢になったとされる。

『広説仏教語大辞典』(東京書籍)にも同様の解説がある。
「有り難い」は仏典において、人間の生身を持って生まれること、仏の教えに浴することの困難さを意味する語とある。
例として、盲目の亀が広い大海で泳ぎ疲れ、「休みたいなあ」と思ったら、たまたま浮木にあう。
何ともあり得ないほどの「ラッキーさ、有り難いこと」を意味する言葉「盲亀浮木」で「運命への感謝」を説明している。
滅多にない幸運を喜び感謝する気持。


「ありがとう」の変遷を『語源辞典』で確認する。

枕草子:有り難きものの段:舅にほめられる婿、姑に思わるる嫁の君

源氏物語:世の中にありがたく難しげなる物かな

ここでも「有り難し」は「感謝」ではなく「なかなか無い」「困難だ」を意味する語意となっている。
そうだとすれば、この時代に「有り難いの反対語を述べよ」と言われれば「容易、簡単、当たり前」とでも答えておけばよかったのだろう。


英語だと「I am sorry」なのか?
今日のように明確に「感謝の用例」が現れるのは江戸時代以降とある。
宣教師によって作られた『日葡辞書』(1603年)には、arigatai→尊い、崇拝に値する好ましい状態や、人の行為にあって、滅多にないことと感謝する気持を込めて喜ばしく思う、嬉しい、かたじけない、ありがとうの記述が既にあった! 
17世紀のポルトガル人は日本人が「ありがとう」を「感謝」の意味で使っている姿を確認していたのである。

 ありがとうの反対語が「日本語辞典」で見つからないなら、英和辞典で見つけてみる。
『英語反対語・対比語辞典』(東京堂出版)を見る。
「Thank you」の反対語は「I am sorry」とある。
え? 日本語の「ありがとう」の反対語は「ごめんなさい、残念です」ではない。
「I am sorry」には「丁重で、断りながらも感謝している気分」が感じられてしまい、反対語とは言い難い。

強いて言えば「No thank you」の方が「感謝知らず」な感じが出て「反対語」にふさわしい。
しかし、それを日本語ではなんとしようか。
「ありがた迷惑だよ、嬉しくなんかないよ! ウザイから消えろ」か?
 これもしっくり来ない。

「ありがとう」の反対語探し続けた結果、「ありがとう」は、肩を並べる反対語が見つからないほど、ものすごく多くの意味を含んだ崇高な言葉である。


そんな「ありがとう」を、マニュアル言葉として安直に使っている人を最近目にする。
「ハイ了解」程度の気持で軽々しく「ありがとうございました」を言う若者が増えている。
人を馬鹿にした「ありがとうございます」が増殖中。
要注意。
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by shokunin_nin | 2012-05-28 05:42 | 自己啓発 | Comments(0)
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